| 内 容 |
1.開会挨拶 宇和島市地域包括支援センター 岩村 正裕 所長
2.講義 「虐待の芽を見過ごさないために」
講師 愛媛県社会福祉士会 三根生 雅人 先生
(概要)
- 虐待とは、繰り返しあるいは習慣的に、冷酷・冷淡な接し方をすること。
- 虐待の発生要因は、介護疲れ・ストレス、知識・理解力の不足、経済問題、サービス不足など様々。感情の問題はアンガーマネジメントが大事。
- 虐待は突然起こらない。様々な背景が連鎖、意識が薄れていき、少しずつ虐待へと近づいていく。チームで対応することが大切。
- 自立とは、依存先を増やすこと(依存的自立)。人は誰しも共存して生きている。何かに頼って自分らしく生活している。介護サービスを利用したり、杖・車椅子を使用したりしていても自立している。
- 尊厳とは、自尊心が尊重されること、信頼が裏切られないこと、存在が肯定されること。
- 支援者と利用者は、限られた時間に、特定の場所で接している。理解するのは難しい。情報の限定性・不確かを認識する、分かろうとすることが大事。
- アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)について、偏見をなくすというわけではなく、偏見を持っていることを自覚することが大切。
- 高齢者虐待の類型は定められているが、これ以外が虐待ではないというわけではない。あくまでも一例、参考。
- ネグレクトは身体的虐待、経済的虐待などほかの問題と関わっている。
- 経済的に厳しく介護サービスを利用できない場合は、生活保護など適切な制度につなぐことが大事。
- 不適切なケアを考えるとき、「虐待」か、「そうでないか」の視点は危険。その人らしい生活はできているか、チームで考えることが大切。
- 自己決定について、安易な「本人がそう言っています」「本人が決めたことです」は危険。十分な情報提供があること、判断能力があることが前提。
- 本人・家族が求めるものが専門職の考えと相違したとき、決定権が専門職側にある状態ではないか。
3.グループワーク
(グループ発表)
- 誰もいない時間帯、自宅でベッド柵やつなぎ服を使用している。ケアマネの動きが難しい。期間をみる、状況を知る、抑止力となる声かけをする。
- 入浴の際の身体の痣など、判断が難しい。家族にどう対応すべきか悩む。
- 親を虐待しており、ほかの家族もそれを知っているにも関わらず、「大事にして欲しくない」と言われたことがある。
- 親に金の無心をしているが、親はそれをよしとしている場合、身内のことなので入りにくい。生活が回らなくなったら行政に相談する。
- 知的障害がある兄弟間でいつも頭を叩いている。このような行動は、どう捉えればよいのか。他人から見ると虐待に見えるが、本人たちはそれほどと思っていない。
- 単なる夫婦げんかなのか分からないときがある。
- お金がなくてサービスが入れられない。施設入所すると生活が成り立たなくなるため、現状を維持しているケースもある。
- 危険回避のため表から鍵をかけるの場合、それは虐待にあたるのか。
- 布団の上に多数のありがいたが、ネグレクトなのか。当時は、どのように家族に言えばいいのか分からず話を変えてしまった。
- 要介護5で看取り傾向であったが、子が受け入れできず、リハビリや経口食を希望される。結果、ケアマネ交代となったケースがある。
- お金を使いたくなく、褥瘡ができてもマットの使用を拒否するケースがあった。介護の理解不足、経済的問題がある場合、管理者や市に相談する。
- 継続的ではないが子から虐待を受けていたと思われるが、現場を見たわけではないし、本人が「自分でお茶をこぼして火傷を負った」と言ったりしていて、判断が難しかった。結果、施設入所となった。地域包括には報告した。
4.質疑応答
(質問)
- 息子は本人のことを思ってしているのかもしれないが、周囲から見るとネグレクト。どう捉えたらよいのか、線引きが難しい。
(回答)
- 虐待の判断をするのは行政。通報してよいのか迷うかもしれないが、おかしいなと思ったら行政に相談、様子をみようかなと思ったら上司に相談。ひとつずつプロセスを踏んでいくこと。これをしたらネグレクト、ひとつ痣があったら虐待、ではない。虐待は突然起こらない。
5.講評
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